"アホなリザードファンにも分かる曲、簡単なロックンロール"
語るまでもない名パンク・バンド。日本の名盤といえば必ず挙がりますね。
鬼才;町田町蔵の所属していた伝説的パンクバンドINU。
発表したスタジオ盤はこの『メシ喰うな!』のみ。ファーストアルバムでありラストアルバムである黄色のジャケット……ここSex Pistolsなんですなぁ。どちらもパンクの王道であります
にしてもイケメンだよなぁ
「フェイド・アウト」と言っておきながら楽曲はフェードアウトで終わらずバシッとキメて終わってます。なんならこのアルバムの中で一番音楽的で綺麗にカッコよく終わってます。これを深読みすると「敢えてフェードアウトをしないで終わらせている」。
音楽をやっている人ならfade outと聞けば曲の終わらせ方のひとつ(フェードアウト)を思い浮かべるのが普通でしょう。ならばこれは曲を前提にしていない詩及び題名といいますか。音楽と歌詞に関連性があるのではなく、どちらも違う次元で関連性も薄い。
え、「パンクの反発精神でフェードアウトしなかった」?それも深読み!!確かにジャンルや演奏のスタイル的には似つかわしくないが、この『メシ喰うな!』というアルバムはかなりポップなまとめ方をしていて、多くのパンクがそうであるように「音源もライヴがすべて。せーのでまんま録って出し!」といった感じでは全くなく、オーヴァーダブも多く音響技術的な工夫もたくさんある作品だから、フェードアウトを嫌う理由もないのかな、と。
「では音楽的にどこをどうしてフェードアウトさせる?」と言われると弱い。妄想。フェードアウトを無理につけるのであれば、例えば次曲「つるつるの壺」は"つるつるつるつるつるつるの壺"と半ば唐突に終わっているが、"お前の頭を開いてちょっと気軽になって楽しめ"を連呼させたままフェードアウトするのも面白い。(しっかしライヴとか観ても"つるつるつるつるつるつるの壺"がとってもシニカルで良いんだなぁ〜うんうん)
「ナイティナインの史上最悪最強のバンド計画」という動画が昔からYouTubeにありまして、これがなかなか面白い。少年ナイフやボアダムスと作っていくのですが、それよりももっと過激なアングラの人たちから、なんと細野晴臣大先生まで出てきてしまうヤバい企画。そこで出来上がった最悪最強のバンド;ミスターダメーズダブル、その作詞協力が町田町蔵。ここで彼の作詞法が分かります。サラっと見るとマジでテキトーやな!そして結構良い人だな!!
後輩くんが言い得てくれたのが「サビだから繰り返すんじゃなくて繰り返すからサビ 」…確かに。
最後に「基本的に詞は作らない」「じゃあなんでこの人に頼んだんだ?!」みたいにまとめてるのがめちゃくちゃ面白い。
「コンサートやるときにサビだけ決めてて、後はその都度違う」みたいなことも言っていて、つまり歌詞lyricsとしてはそれくらいにしか思ってない…
のだけど!小説家としても高く評価されてるくらいの町田町蔵/康。後に出される歌詞集の名前は『町田康全歌詩集』。歌詩集を発表すること自体もそうだけど、この詩poemsという漢字から「曲の歌詞」をただ軽視しているわけでは決してないことが分かります。
ライヴにおいての歌詞は、文脈で勝負できない程に刹那的であるといったところは個人的に大いに支持したいです。
今年8月にアナログリマスターが出るんですね!!!
オリジナル盤、俺はなかなか見つけられないのでこれ欲しいな
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音楽も生き様もなにもかもパンクなのですが、上記にある通り音響的な点でこのアルバムはかなりアーティスティックで、聴きやすくポップな切り口。もちろんそのサウンドのからくりにはアレンジも大きく関わるでしょう。
ギターひとつにしても、限りなくクリーンに近いクランチギターでこんなことできないよー…
この時のギターは、スターリンにも所属していた北田昌宏。このアルバムは彼のギターワークに依るところも多いと思います。曲数で言えばほぼ半分作曲もしてるしね。
この曲「フェイド・アウト」はまずイントロのフレーズがめちゃかっこいい。途中トリル?がプリングで始まってるのにハンマリングで終わってるのが難しい。最後の最高音もかなり狙いにいかないと成功しません。しかも多分小指で。
サビですら開放弦を交えてひっきりなしに動く。2回目のサビはオクターヴ上のとこにも音がありますね
スミスのジョニー・マーの如く、ジュディマリTAKUYAの如く(笑)、歌があろうがなかろうがひっきりなしに動いてるのだけど、肝心のギターソロ!なぜかここは8小節ず〜っと同じ。定番のオクターヴチョーキング、簡単です。なんなんだ…
あとあとA-6「メシ喰うな!」でのインプロノイズもよく聴くとセンス抜群です。
ベースも難しいし、ドラムもレコーディングがどうなっていたのかわかりません。明らかに別録りの太鼓や、キックが伴ってないシンバル(A-2「つるつるの壺」)や・・・
(パーマリンク踏んできた人にはわからないと思いますがここからread moreって言われる部分です)
僕には自分の曲でメロディーも歌詞も引用した経験が一回だけありまして、それがINUの「つるつるの壺」
スタジオで口について出たうろ覚えの歌詞を歌いそのまま採用したので 継ぎ接ぎの引用です。
しかし音源化して販売するときだけ一応替えました笑 ライヴでは歌ったことないのだけどこんな感じ。
毎日AM8:00(はちじ)にあれをやり これをやる顔が沢山
早すぎる休息は おまえの胸
政治家の演説はノー
いかれたパンクはお前をしばくもの-スペース・トラブラーズ「妄想特急」
改札AM8:30(はちじはん)に通過して見慣れたもの白山8:30頃〜
最大の風速は おまえの家
30.5kHz(さんまんごひゃくヘルツ)の犬笛の音も
ドイツのパン喰え!お前を縛る程-スペース・トラブラーズ「妄想特急」(2014『妄想特急』)
"30.5"なのはB-3「305」から。
"パン喰え!"ってのは「メシ喰うな!」の言い換え。
メシ喰うな!→パン喰う→パンク・・・なんとかINUについて書き表そうと上の記事を書いたけど、やっぱり町田町蔵さんは何を考えてるのかよく分からないし、よく分からないからそれでいいのだと思う。論理より錯乱とお仰っておられるのだからっ…!!!
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・・〆てるようでそんないいこと言えてないんで最後の最後にもう一つ。
A-2「つるつるの壺」で面白いのはヒラ歌もサビも違うメロディーなのだけど、歌詩だけを見るとセクション関係なく統一されています
つまりヒラ歌の歌詩でサビも大体歌えるんです。
その秩序から最後は抜け出し"お前の頭を開いてちょっと気軽になって楽しめ"のループ。これが際立つんですかね〜