遠い未来の 新しい君に
新しい歌を 贈るよ
前作のセルフタイトルEP『The Waterfalls』に引き続き、
今作もレコーディングエンジニアとして呼んでいただけました!
僕にとっても彼らにとっても自信作ができました!
発売を記念して恒例の全曲レヴューなどアルバム解説をしたいと思います。
アルバムについて
確固としたウォーターフォールズ・マナー;トレードマークと呼べるようなキャラクターが確立されてきた。- 男女ツインヴォーカル
- 明確なサウンドスケープを打ち出すギター
- ドライヴ感満載で、時折複音でアクセントを打ち出すベース
- 太鼓本来の鳴り・響きを引き出す力強いドラム
- 甘く儚い音価の長いⅶ音が多用されるメロディー
- あくまでもシンプルなコード進行
- 英語も日本語も使われる歌詞
その彼らのキャラクターをより濃く堪能できる作品となっている。
それと同時に今作は、ウォーターフォールズが踏み込もうとしている新しい側面・次の段階への可能性を大いに感じることができる!
ライヴで未発表の完全新曲もあるので、ライヴとはまた違った彼らを体感できるかも。
《2人のソングライター》
すべての楽曲はメンバーのセキグチコウスケ・輪湖真緒の2人のソングライターにより作曲されている。前作は作曲担当の割合が、
コウスケ:輪湖=3:1
であったが、
今作は
コウスケ:輪湖=3:5
となっている。
2人の間でパワーバランスなどはなく、
どちらもメインコンポーザーなのだ!
いつか共作を期待したいところ。。。
《男女ツインヴォーカル》
ウォーターフォールズは男女ツインヴォーカルであるが、「いつでも常に2人で歌うこと」を目的としているのではなく(どちらか1人だけがリードヴォーカルである曲もあるということ)、
どのように聞かせるのが良いかを曲によって考えられている姿勢も評価したいところ。
《贅沢な2枚同時発売》
『Youthlight』と『In the Blue Lagoon』は、別々のパッケージとして販売される。アートワークが示すように、楽曲を「赤」と「青」の2つのイメージに分けて収録しているが、
2つで対をなす言わば「2枚組」である。
個人的には「Youth Lagoon」とか「ヤギ盤」と呼びたい!
2枚に分けて販売するメリットを見出すのは難しく、勇気のいるところだが、
バンドは『赤盤』『青盤』に分けてリリースし、色のイメージを表現する方を優先した。
ちなみに・・・曲順について。
曲順の案を決めたのはタケウチ(Dr.)と記憶しているが、タケウチは自分ではないと言っている。
僕もアイディア出しに一枚噛んでいたためややこしいが、意見が食い違っている。。
このあたりがハッキリしないのも、「赤盤」「青盤」っぽい!(本当にジョージが選曲したの? 的な意味だ)
(僕が提案したかもしれないという)最初の案からの、最終的な調整はタケウチがしている。
『Youthlight』
1. a long long sleep
2. Ride 3
3. Planet
4. Youthlight
『In the Blue Lagoon』
1. Nowhere
2. Brighter
3. In the Blue Lagoon
4. the long long goodbye
オーヴァーチュア的な位置付けのギターロックです。
爽やかなコードを心地いいテンポに乗せて走っていく、短距離走的な曲。
イントロ、そしてヴァースからブリッジへと進み、
その後(1:13〜)ギターはツインリード的なソリを挟んでからセパレート……2人それぞれがソロを取る(1:36・1:58)。
最後(2:22)もとても"ギターらしい"フレーズで全力疾走し、曲はゴールを迎える。
"ギターらしい"としたが、ハンマリングで弦移動していくフレーズのことだ。
このフレーズにちょっとヘンな浮遊感があるのが分かるだろうか?
コードはⅣM7を掻き鳴らしている中、
リードギターはⅵ ⅶ ⅱ ⅲ ⅴ ⅵとなっている。(ⅰがないから浮遊感が生まれる?)
ギターでとても弾きやすいフレーズ
最初のメロディー"You are brighter"とかは、民謡・童謡・童歌的なシンプルさがあるような気がする。
「眠り」の曲に例えるなら「Frère Jacques」みたいな?
は!これもding-dongじゃねぇか!!!!!!!(前作「Open」レヴューの項を参照)
ソリ中(1:13〜)では、リズム隊がアタマ・アタマでキメている。
ドラムがチョークしたときのベースの音価が気持ちいい!(1:24)
ギターソロ(コウスケが弾く1本目)中でのベースのフィルも気持ちいい!!(1:41など)
キックとベースがシンコペーションで絡んだり絡まなかったりするのは、クセなのだろうが意図がないわけではないらしい。
ブリッジ部には「Youthlight」チックなギターフレーズもチラリ…
(これまでは英語での一人称複数"we"(とus)が「Somewhere」で出ていただけである)
曲調も相まって、しっかりと強く自己を打ち出してくれているように感じるよ!!
イントロで紡がれる単音フレーズの余韻はシンセのように聞こえるかもしれないが、ギターのペダルエフェクターで出される音をそのまま使っている。
エンディングのヒリヒリ感は意図的。ミックス時に歪ませているため、ノイズが発生したり 持ち上がったりしている。
レコーディングのエピソード……
本作のギターのレコーディングでは、プレイヤーはアンプを置いた場所とは別の部屋で演奏を行なった。
(プレイヤーはモニタールームに居て、隣の部屋でアンプの音を収録する形だ。)
この曲のエンディングの余韻にはギターのフィードバックが必要であったため、
エンディング直前に隣の部屋のドアを開け!
プレイヤーはコードを鳴らしながら!
ギターを持って急いでアンプの前に移動し!実現させた…
更にフィードバック感を足すために、アンプの前で弾いたギターを1本だけ重ねている。(最後のジャーン一発のみ)
これはThe Waterfallsなりの「Waterfall」だ!
前作の「Ride」で聴かせてくれた彼らなりのロックンロールは、じっくりとしたサイケに発展している。
初めて聴いた時から「逆再生の似合う曲だな」と思っていた。
ミドルエイトのⅦ♭→Ⅴ→なんて、逆行っぽい進行。
順行・逆行どちらでも成り立つパワーが込められてる進行じゃないか!
「Brighter」と同じように、コーラス部?が「Ha〜」のスキャットのみであるが、
ほぼワンノートでのロングトーン。
(BPM85で約8拍伸ばす…レコーディングでも息が続かないことに苦労していた。)
「Ha〜」とⅰ音を伸ばすが、入りの音だけが下がっている。
この入りの音にはヴァリエーションがあり、使い分けているようだ。
まずは1回目「♭ⅶ→ⅰ」(0:44)。
この曲の世界観にミクソリディアンな♭ⅶはピッタリ!
しかし、2回目からは「♮ⅶ→ⅰ」(0:50〜)!こちらも気持ちいい。
イメージしていた♭ⅶと気持ちよくぶつかってくれたり、
♭ⅶにいた我々を♮ⅶに迎えてくれるようにも響く。
こういう曲の演奏キーはDに限るよねー
小生のミックスではなく、彼らのアレンジの勝ち。
周波数帯域的な意味での「縦」が上手い。
逆再生自体は、前作「Open」で登場しているが、
それはペダルのエフェクターでのリヴァースディレイ音をリアルタイムに演奏したものだった。(本曲「Ride 3のイントロ バンドイン後で聴けるリヴァースギターも同じ(0:22))
今回はバンドとして録音した音を、レコーディング・ミックス完了後に逆さまにしている。(=最終的にどんな音になるか、演奏中は分からない状態)
しかも「1曲まるまる収録」の勇気が本当に面白い!やれて良かった。
ちなみにそのエンディングの逆再生パートで使っている音源は、
順再生パートとは別のミックスなのはここだけの秘密…
(例えばミドルエイト部の声にエフェクトがかかっていたり、リヴァーブ量が少なかったりetc...)
言わせてもらえば「(これまでの)ウォーターフォールズらしくない」曲であるが、輪湖らしさは出てる。
初めて聴いた印象は「サブドミナントマイナーをとうとう使ってしまった!」である。しかしShe can write a beautiful song!
「らしくない」としたが、2コーラス目の頭のヴァース部での落とし方など、前作収録の「Somewhere」的でお得意の構成である。
ベースソロ(5:19)が含まれるが、バックの演奏は何も変わらず突き進んでいるのも面白い(=ベースソロ前と同じ演奏を続けている)。
目立ちにくいベースのために隙間を与えるのではなく、ベースに前へ出てきてもらっている形だ。
「高フレットの音が膨らむ」というエレキベースの特性が活かされている。
ライヴでも持田さんはエフェクターを挟まないセッティングのため、特別音量などを持ち上げることはしてないが、しっかりと前に出て聞こえる。
「ウォーターフォールズはあまり一人称を使わない」という見解は覆された。。
冒頭のヴァース部、形容詞で鮮やかに修飾された名詞たちも、前作「Somewhere」を連想させる。たまには後ろ ふりむきながら
僕は太陽系第3惑星についての歌だと感じたけど果たして…
落とした方のヴォーカルはポップガードを外して歌わせて、歯擦音を多く含ませた。これにより小さい音でも輪郭を持たせることができた。
最初からダブルの方は小さくミックスするつもりだったので、この方法を採った。
出番は少ないがタムの音色が良く録れた。
リズムレコーディング最終日(3日目)に録った曲だが、
それまでのレコーディングを踏まえ、プレイヤーのチューニングと一緒に毎回サウンドを更新できた。
ドラムは漢気のモノラル!(曲の進行に合わせて一部ステレオに。あとアンビマイクは左右に振っています)
エンディング前のラストのメロ入り(5:38 クラッシュ連打)では、ドラムが左右に動くが、ドラム タケウチのオーダー。
2人のギターソロとベースソロがあるので、ドラムも目立ちたかったのかな?冗談す。
ただ音量を変化させずに、目立たせることができるいい方法だと思う。
安定したコードだが、重心が高いヴォイシングで期待感を煽る。
突き抜けた明るさ・ポップさのあるこの曲は、ライヴでもハイライトとなる人気の1曲だ。
駆け抜けた先にあるラスサビ(2:41〜)は、構成上「これまでのサビの変奏」と位置付けるのが普通であろうが、
この曲においては、「これまでのサビは実はBメロであったのか」と思わせるくらいに映えてラスサビが響く。
それほどラスサビにクライマックスを置けている。
曲の持っていき方としては、彼らの愛するオルタナティヴな姿勢ではないかもしれないが、
単純に楽曲の構成として、普遍的な理想形であることに間違いはない。
曲中のギターソロと、エンディングのギターソロで、ソロを取るプレイヤーが交代しているのも、なかなか粋でなないか!
ラスサビ以降、輪湖のギター(右ch)のカポの位置が変わります。
ライヴでは演奏中にカポ変えるのだけど、クール!変えるときに出るノイズ含めクール!
ちなみに別の話、ライヴ中コウスケはカポを捨てることがしばしば。
Only you slyに聞こえて仕方がないのでツッコんでみたら、
コウスケ曰く「Only youthlightと歌うほうがダサい」とのこと…。
ラスサビなどで疾走感を出せているのは、楽器だけでなく実はヴォーカルも貢献しているように思えてならない。
曲調の割には声へのリヴァーブ量が少し多いが、本EPを曲順通りに聴いた時にリヴァーブが欲しくなり今の形に。
当初はもう少しドライな声を想像してたのだが、「単曲」でなく「アルバム」に寄せた。
アルバムレコーディング以前に、一発録りによる(結果的)プリプロレコーディングを行っていたため、目指すべきサウンドがどの曲よりも具体的に定まっていた。
1曲目ということで『Youthlight』EPと対になる雰囲気であることをしっかりと打ち出してくれている。
そういえば前作のEPには「Ride」という曲が入ってましたね。
バンド全体がドーンと固まりで鳴ってくれるが、嘘くさくない音で気持ちよくできた。
ズッシリと質量のあるドラムは、部屋鳴りを収録したルームマイクをふんだんに使用した結果だ。
エンディング、スネアのみになる箇所は、ルームマイクのみを残して収束を図ってみた。(「EQでハイを下げて曇らせる」ではなく!今作で多用している)
ヴォーカルに重なるウィスパーヴォイスはコウスケ本人のアイディア。
ヴォーカルレコーディングの際、迷いなくウィスパーヴォイスを重ねる作業に移ったため、元々あったイメージなのだろうか。
想定よりもウィスパーのバランスを大きくミックスしたが、効果的に作用していると思う。
爽やかだけど、派手だったり明るすぎたりしない温度感でキめられるのがウォーターフォールズ流儀。
コーラス部のリズム、スネア直前で左手のハイハットを絡めるドラムパターンが面白い。
2コーラス目ブレイクのアイディアはお得意だが、ドラムフィルなどが特に、前作収録の「Somewhere」のように展開していく。
個人的には一リスナーとして今作で一番好きかも。。。
「Hey Jude」や「日曜日よりの使者」的なシンガロングはきっと必要ないのだ。
ドラムは、ドラマー正面に置いたマイクと、アンビを録るルームマイクのみ。スネアなど各パーツへのオンマイクは切っている。
ベースは、アンプマイクのみ。DIは切っている。
声はショートディレイ気味(ADT)。
エンディングの16ビートは、ドラムの音量がどんどん突っ込まれていき歪んでいく!
個人的に「どんどん潰して暴れさせよう!」というアイディアが録音前からあったので、それを見越しマイクをセッティングしました。
ドラマー正面に置いたマイクで録れた音を、ガシガシに虐めています。
イントロ前に流れるサウンドエフェクトはコウスケの宅録によるもの(以前「Brighter」を演奏する際にライヴで流していた)。
ギターに様々なエフェクトを掛けて作られたループらしい。
フリーリーな逆再生ギターから始まることから「Open」を思わせる。
「Open」では6分間の演奏をミニマムなピースで創り上げた。「同じ歌メロのセクションは1度しか出てこない」「そのセクションを挟むのは1つのリフのみ」というのが「Open」の特徴だ。
その中で「同じ歌メロを同じ歌詞で繰り返す」こともしていたが、この「In the Blue Lagoon」ではその手法がメインになっている。
具体的にはヴァース部とコーラス部……そこを繰り返しに留めておくことで、ヴァース部に続くミドルエイト部(2:16~)でのメロと歌詞の広がりや、ラストコーラス部(7:32)の対旋律構造の美しさが浮き彫りになる。
ドラムの基本パターンから始まり、スネア16分4発フィルで入るのは「Ride 3」との共通点。
最後にはリプリーズ的なセクションで締められる。クライマックスである。
歌詞に"来るはずのないバスを"とあるが、
実際の歌唱では
一方が"来るはずの"と歌い
もう一方が"ないバス"と歌う
"来るはずの"の後に続く"ない"は、それまで歌われた意味を覆す。
「はずの…」と言われれば「ない」が付いてくるケースはかなり多いため予想はできるのだが、しかし、
この行まで交互に歌われていた歌詞の分け方は、読点で区切れるようなもので(※)、それぞれがそれぞれで歌う言葉のみで意味が一貫・完結していたため、"来るはずの"は「来るはずである」と捉えられるだろう。
(この感覚を「文節」という言葉で説明したかったが、"来るはずの"と"ない"は文節単位では区切られてしまう。よって「読点で区切られる」とした。)
しかし、音楽が進んでいくにつれて解釈した文「"来るはず"である」が「"ない"」によって打ち消されるのだ。
この辺りの言葉のトリックは、芸術の構成要素として時間というものを大きく伴う音楽(歌)でないとなかなかできない表現だ。
また、複数人によって別々で歌われることで、より深みを持たせることができるところだ。
小説の文章であれば、読み進めるスピードは、読む本人に委ねられる。
例えば"来るはずのない"という言葉を見たとき、脳内では最初から否定形で解釈されるだろう。
音楽(歌)はそうではない。(小説や詩のように、歌詞を眺めながら聴き進めるのでなければ)
ましてやもう一方の歌い手に、文意の確定を任せるという方法は、ツインヴォーカルでないと出来ない手法なのではないか?
ノイジーな間奏部分は、実はフランジさせたシンプルなエイトビートのドラムが重ねられていて、ツインドラムになっている。重ねたドラムの方では、スネアにスプラッシュ・シンバルを乗せるなどし、元音から正規のドラムとの違いを作った。
バンドイン前のハーモニクス(0:21)は、輪湖のオーダーでタイミングを大きく修正しています。
後半のリプリーズが始まる際のフレーズ(7:00 無修正)とリズムが異なるのはそういうこと
ラストの余韻の持ち上げ(9:00)は僕が勝手にやりました。ツッコまれなかったので良かったです♪
レコーディングのエピソード……
曲中に謎の金属音が入ってますが、これについて。
『In the Blue Lagoon』
1. Nowhere
2. Brighter
3. In the Blue Lagoon
4. the long long goodbye
『Youthlight』
Only youthlight「a long long sleep」
曲
曲のサイズ(3分サイコー!)や、インスト寄りな構成が示す通り、オーヴァーチュア的な位置付けのギターロックです。
爽やかなコードを心地いいテンポに乗せて走っていく、短距離走的な曲。
イントロ、そしてヴァースからブリッジへと進み、
その後(1:13〜)ギターはツインリード的なソリを挟んでからセパレート……2人それぞれがソロを取る(1:36・1:58)。
最後(2:22)もとても"ギターらしい"フレーズで全力疾走し、曲はゴールを迎える。
"ギターらしい"としたが、ハンマリングで弦移動していくフレーズのことだ。
このフレーズにちょっとヘンな浮遊感があるのが分かるだろうか?
コードはⅣM7を掻き鳴らしている中、
リードギターはⅵ ⅶ ⅱ ⅲ ⅴ ⅵとなっている。(ⅰがないから浮遊感が生まれる?)
ギターでとても弾きやすいフレーズ
最初のメロディー"You are brighter"とかは、民謡・童謡・童歌的なシンプルさがあるような気がする。
「眠り」の曲に例えるなら「Frère Jacques」みたいな?
は!これもding-dongじゃねぇか!!!!!!!(前作「Open」レヴューの項を参照)
ソリ中(1:13〜)では、リズム隊がアタマ・アタマでキメている。
ドラムがチョークしたときのベースの音価が気持ちいい!(1:24)
ギターソロ(コウスケが弾く1本目)中でのベースのフィルも気持ちいい!!(1:41など)
キックとベースがシンコペーションで絡んだり絡まなかったりするのは、クセなのだろうが意図がないわけではないらしい。
ブリッジ部には「Youthlight」チックなギターフレーズもチラリ…
歌詞
ウォーターフォールズ初の日本語一人称"僕"が出ている!"I"も使われてますね。(これまでは英語での一人称複数"we"(とus)が「Somewhere」で出ていただけである)
曲調も相まって、しっかりと強く自己を打ち出してくれているように感じるよ!!
サウンド
比較的パキッとした音。イントロで紡がれる単音フレーズの余韻はシンセのように聞こえるかもしれないが、ギターのペダルエフェクターで出される音をそのまま使っている。
エンディングのヒリヒリ感は意図的。ミックス時に歪ませているため、ノイズが発生したり 持ち上がったりしている。
レコーディングのエピソード……
本作のギターのレコーディングでは、プレイヤーはアンプを置いた場所とは別の部屋で演奏を行なった。
(プレイヤーはモニタールームに居て、隣の部屋でアンプの音を収録する形だ。)
この曲のエンディングの余韻にはギターのフィードバックが必要であったため、
エンディング直前に隣の部屋のドアを開け!
プレイヤーはコードを鳴らしながら!
ギターを持って急いでアンプの前に移動し!実現させた…
更にフィードバック感を足すために、アンプの前で弾いたギターを1本だけ重ねている。(最後のジャーン一発のみ)
「Ride 3」
曲
意欲作。これはThe Waterfallsなりの「Waterfall」だ!
前作の「Ride」で聴かせてくれた彼らなりのロックンロールは、じっくりとしたサイケに発展している。
初めて聴いた時から「逆再生の似合う曲だな」と思っていた。
ミドルエイトのⅦ♭→Ⅴ→なんて、逆行っぽい進行。
順行・逆行どちらでも成り立つパワーが込められてる進行じゃないか!
「Brighter」と同じように、コーラス部?が「Ha〜」のスキャットのみであるが、
ほぼワンノートでのロングトーン。
(BPM85で約8拍伸ばす…レコーディングでも息が続かないことに苦労していた。)
「Ha〜」とⅰ音を伸ばすが、入りの音だけが下がっている。
この入りの音にはヴァリエーションがあり、使い分けているようだ。
まずは1回目「♭ⅶ→ⅰ」(0:44)。
この曲の世界観にミクソリディアンな♭ⅶはピッタリ!
しかし、2回目からは「♮ⅶ→ⅰ」(0:50〜)!こちらも気持ちいい。
イメージしていた♭ⅶと気持ちよくぶつかってくれたり、
♭ⅶにいた我々を♮ⅶに迎えてくれるようにも響く。
こういう曲の演奏キーはDに限るよねー
サウンド
ベースの鳴りが美味しいところに置かれていて気持ちいい。小生のミックスではなく、彼らのアレンジの勝ち。
周波数帯域的な意味での「縦」が上手い。
逆再生自体は、前作「Open」で登場しているが、
それはペダルのエフェクターでのリヴァースディレイ音をリアルタイムに演奏したものだった。(本曲「Ride 3のイントロ バンドイン後で聴けるリヴァースギターも同じ(0:22))
今回はバンドとして録音した音を、レコーディング・ミックス完了後に逆さまにしている。(=最終的にどんな音になるか、演奏中は分からない状態)
しかも「1曲まるまる収録」の勇気が本当に面白い!やれて良かった。
ちなみにそのエンディングの逆再生パートで使っている音源は、
順再生パートとは別のミックスなのはここだけの秘密…
(例えばミドルエイト部の声にエフェクトがかかっていたり、リヴァーブ量が少なかったりetc...)
歌詞
V6「Planet」
曲
スローなナンバー。言わせてもらえば「(これまでの)ウォーターフォールズらしくない」曲であるが、輪湖らしさは出てる。
初めて聴いた印象は「サブドミナントマイナーをとうとう使ってしまった!」である。しかしShe can write a beautiful song!
「らしくない」としたが、2コーラス目の頭のヴァース部での落とし方など、前作収録の「Somewhere」的でお得意の構成である。
ベースソロ(5:19)が含まれるが、バックの演奏は何も変わらず突き進んでいるのも面白い(=ベースソロ前と同じ演奏を続けている)。
目立ちにくいベースのために隙間を与えるのではなく、ベースに前へ出てきてもらっている形だ。
「高フレットの音が膨らむ」というエレキベースの特性が活かされている。
ライヴでも持田さんはエフェクターを挟まないセッティングのため、特別音量などを持ち上げることはしてないが、しっかりと前に出て聞こえる。
歌詞
「a long long sleep」では一度だけ出てきた一人称だったが、ここでは多用されている(そもそも英語という言語の特徴なのだが) 。「ウォーターフォールズはあまり一人称を使わない」という見解は覆された。。
冒頭のヴァース部、形容詞で鮮やかに修飾された名詞たちも、前作「Somewhere」を連想させる。たまには後ろ ふりむきながら
僕は太陽系第3惑星についての歌だと感じたけど果たして…
サウンド
2コーラス目Aメロ(2:52)のヴォーカルも(他の箇所と同じく)ダブルトラックだが、一方の音量をかなり落としている。落とした方のヴォーカルはポップガードを外して歌わせて、歯擦音を多く含ませた。これにより小さい音でも輪郭を持たせることができた。
最初からダブルの方は小さくミックスするつもりだったので、この方法を採った。
出番は少ないがタムの音色が良く録れた。
リズムレコーディング最終日(3日目)に録った曲だが、
それまでのレコーディングを踏まえ、プレイヤーのチューニングと一緒に毎回サウンドを更新できた。
ドラムは漢気のモノラル!(曲の進行に合わせて一部ステレオに。あとアンビマイクは左右に振っています)
エンディング前のラストのメロ入り(5:38 クラッシュ連打)では、ドラムが左右に動くが、ドラム タケウチのオーダー。
2人のギターソロとベースソロがあるので、ドラムも目立ちたかったのかな?冗談す。
ただ音量を変化させずに、目立たせることができるいい方法だと思う。
「Youthlight」
曲
イントロ1音目、救いのコードから始まる。安定したコードだが、重心が高いヴォイシングで期待感を煽る。
突き抜けた明るさ・ポップさのあるこの曲は、ライヴでもハイライトとなる人気の1曲だ。
駆け抜けた先にあるラスサビ(2:41〜)は、構成上「これまでのサビの変奏」と位置付けるのが普通であろうが、
この曲においては、「これまでのサビは実はBメロであったのか」と思わせるくらいに映えてラスサビが響く。
それほどラスサビにクライマックスを置けている。
曲の持っていき方としては、彼らの愛するオルタナティヴな姿勢ではないかもしれないが、
単純に楽曲の構成として、普遍的な理想形であることに間違いはない。
曲中のギターソロと、エンディングのギターソロで、ソロを取るプレイヤーが交代しているのも、なかなか粋でなないか!
ラスサビ以降、輪湖のギター(右ch)のカポの位置が変わります。
ライヴでは演奏中にカポ変えるのだけど、クール!変えるときに出るノイズ含めクール!
ちなみに別の話、ライヴ中コウスケはカポを捨てることがしばしば。
歌詞
ラジオに想いを馳せる曲。Only you slyに聞こえて仕方がないのでツッコんでみたら、
コウスケ曰く「Only youthlightと歌うほうがダサい」とのこと…。
サウンド
まず声にスピード感がある。他の曲よりも歌い手が声量を出しているから付いてくる鋭さなのか?ラスサビなどで疾走感を出せているのは、楽器だけでなく実はヴォーカルも貢献しているように思えてならない。
曲調の割には声へのリヴァーブ量が少し多いが、本EPを曲順通りに聴いた時にリヴァーブが欲しくなり今の形に。
当初はもう少しドライな声を想像してたのだが、「単曲」でなく「アルバム」に寄せた。
アルバムレコーディング以前に、一発録りによる(結果的)プリプロレコーディングを行っていたため、目指すべきサウンドがどの曲よりも具体的に定まっていた。
『In the Blue Lagoon』
ここが Destination「Nowhere」
曲
大人な一曲。暗くはないのにどこか物哀しい…でもスッキリと聴ける曲だ。1曲目ということで『Youthlight』EPと対になる雰囲気であることをしっかりと打ち出してくれている。
歌詞
いきなりの「きよしこの夜」。ヤマタツか。そういえば前作のEPには「Ride」という曲が入ってましたね。
サウンド
バランスが良い。どの音も気に入っている。バンド全体がドーンと固まりで鳴ってくれるが、嘘くさくない音で気持ちよくできた。
ズッシリと質量のあるドラムは、部屋鳴りを収録したルームマイクをふんだんに使用した結果だ。
エンディング、スネアのみになる箇所は、ルームマイクのみを残して収束を図ってみた。(「EQでハイを下げて曇らせる」ではなく!今作で多用している)
ヴォーカルに重なるウィスパーヴォイスはコウスケ本人のアイディア。
ヴォーカルレコーディングの際、迷いなくウィスパーヴォイスを重ねる作業に移ったため、元々あったイメージなのだろうか。
想定よりもウィスパーのバランスを大きくミックスしたが、効果的に作用していると思う。
「Brighter」
曲
ド頭からコーラス部(=サビ)始まり!(「Nowhere」もそうだけど…)爽やかだけど、派手だったり明るすぎたりしない温度感でキめられるのがウォーターフォールズ流儀。
コーラス部のリズム、スネア直前で左手のハイハットを絡めるドラムパターンが面白い。
2コーラス目ブレイクのアイディアはお得意だが、ドラムフィルなどが特に、前作収録の「Somewhere」のように展開していく。
個人的には一リスナーとして今作で一番好きかも。。。
歌詞
コーラス部がスキャット。「La la la」や「Wow wow」でなく「Ha」のメリスマなのが、インディーの姿勢だろうか。(「Ride 3」との共通点でもある)「Hey Jude」や「日曜日よりの使者」的なシンガロングはきっと必要ないのだ。
サウンド
2コーラス目のヴァース部後半(2:21)、リズム隊の音がくぐもるが、こちらもEQ操作ではなく、マイクを減らして実現させている(「Nowhere」と同じく)。ドラムは、ドラマー正面に置いたマイクと、アンビを録るルームマイクのみ。スネアなど各パーツへのオンマイクは切っている。
ベースは、アンプマイクのみ。DIは切っている。
声はショートディレイ気味(ADT)。
エンディングの16ビートは、ドラムの音量がどんどん突っ込まれていき歪んでいく!
個人的に「どんどん潰して暴れさせよう!」というアイディアが録音前からあったので、それを見越しマイクをセッティングしました。
ドラマー正面に置いたマイクで録れた音を、ガシガシに虐めています。
イントロ前に流れるサウンドエフェクトはコウスケの宅録によるもの(以前「Brighter」を演奏する際にライヴで流していた)。
ギターに様々なエフェクトを掛けて作られたループらしい。
「In the Blue Lagoon」
曲
前作EP『The Waterfalls』ラストトラック「Open」との対比から話を始める。フリーリーな逆再生ギターから始まることから「Open」を思わせる。
「Open」では6分間の演奏をミニマムなピースで創り上げた。「同じ歌メロのセクションは1度しか出てこない」「そのセクションを挟むのは1つのリフのみ」というのが「Open」の特徴だ。
その中で「同じ歌メロを同じ歌詞で繰り返す」こともしていたが、この「In the Blue Lagoon」ではその手法がメインになっている。
具体的にはヴァース部とコーラス部……そこを繰り返しに留めておくことで、ヴァース部に続くミドルエイト部(2:16~)でのメロと歌詞の広がりや、ラストコーラス部(7:32)の対旋律構造の美しさが浮き彫りになる。
ドラムの基本パターンから始まり、スネア16分4発フィルで入るのは「Ride 3」との共通点。
最後にはリプリーズ的なセクションで締められる。クライマックスである。
歌詞
ツインヴォーカルの面白い使い方を、文学的な側面でしている。歌詞に"来るはずのないバスを"とあるが、
実際の歌唱では
一方が"来るはずの"と歌い
もう一方が"ないバス"と歌う
"来るはずの"の後に続く"ない"は、それまで歌われた意味を覆す。
「はずの…」と言われれば「ない」が付いてくるケースはかなり多いため予想はできるのだが、しかし、
この行まで交互に歌われていた歌詞の分け方は、読点で区切れるようなもので(※)、それぞれがそれぞれで歌う言葉のみで意味が一貫・完結していたため、"来るはずの"は「来るはずである」と捉えられるだろう。
(この感覚を「文節」という言葉で説明したかったが、"来るはずの"と"ない"は文節単位では区切られてしまう。よって「読点で区切られる」とした。)
しかし、音楽が進んでいくにつれて解釈した文「"来るはず"である」が「"ない"」によって打ち消されるのだ。
この辺りの言葉のトリックは、芸術の構成要素として時間というものを大きく伴う音楽(歌)でないとなかなかできない表現だ。
また、複数人によって別々で歌われることで、より深みを持たせることができるところだ。
小説の文章であれば、読み進めるスピードは、読む本人に委ねられる。
例えば"来るはずのない"という言葉を見たとき、脳内では最初から否定形で解釈されるだろう。
音楽(歌)はそうではない。(小説や詩のように、歌詞を眺めながら聴き進めるのでなければ)
ましてやもう一方の歌い手に、文意の確定を任せるという方法は、ツインヴォーカルでないと出来ない手法なのではないか?
サウンド
ドラムはモノラルを基本に。ただまぁ曲調も曲調なので、広げるべきとこで広げてます。包まれる音像が似合う曲だけど、それは基本的にギターに任せておきたかった。ノイジーな間奏部分は、実はフランジさせたシンプルなエイトビートのドラムが重ねられていて、ツインドラムになっている。重ねたドラムの方では、スネアにスプラッシュ・シンバルを乗せるなどし、元音から正規のドラムとの違いを作った。
バンドイン前のハーモニクス(0:21)は、輪湖のオーダーでタイミングを大きく修正しています。
後半のリプリーズが始まる際のフレーズ(7:00 無修正)とリズムが異なるのはそういうこと
ラストの余韻の持ち上げ(9:00)は僕が勝手にやりました。ツッコまれなかったので良かったです♪
曲中に謎の金属音が入ってますが、これについて。
ギターがぐちゃぐちゃになるところの録音中に、コウスケが使っていたスライド・バー(ボトルネック)が床に落ちた!チャリーン
(上に載せたインスタの、2枚目の動画がその時の様子です。)
これが「面白い!入れよう!!」となり、
ギターアンプ用マイクがある部屋でコウスケに再度スライド・バーを落としてもらい、
その音だけを録音しました!(笑)
(マイクがあった部屋は スライド・バーが落ちた部屋とは別だったので、最初に落とした時点では収録されていない)
「the long long goodbye」
曲
前曲「In the Blue Lagoon」には、セルフなリプリーズ演奏も含まれていて、ドラマチックに終わる長尺であるからか、この曲はアンコール的に響く。きちんと作品を締める位置付けとして綺麗に仕事をしている。「a long long sleep」と対になる曲でもある。ベースとドラムのリズムなどが似ている。
「Fall」(前作収録)を思わせるベンドを交えたリフのようなメロディーのようなフレーズが印象的。ギターフレーズの終わりをクってキメで捕らえるのは「Nowhere」的か。
ドラマチックなコードは使ってないはずなのに、しっかりイメージを広げてくれるのはメロの切なさが作用しているか。
"さよなら"のとこで最後に伸ばしているのはやっぱりⅶ音。彼らの特徴である。
歌詞
ラストトラックが"お別れ"・"さよなら"の曲だが、最後の曲にすることが決まっていたわけではない。サウンド
イントロにシンセパッドのような音が重なっているように聴こえるが、こちらもギターのペダルエフェクターによるもの。付け足しているのではなく、左右交互に鳴るギターに掛けられているものが、綺麗に鳴ってくれている。ちなみにその左右交互ギターは、先の演奏(右)を、ミックス時にそのまま左にコピーしズラして鳴らしている。
タケウチのドラムセット中のシンバルは、ハイハット1組とクラッシュシンバル2枚のみ(16"・18")。
一般的なセットと比べると、低いライドシンバルを省いているため、サウンドの重心は高く/軽くなりそうなのだが、
この曲の18"クラッシュは、とてもヘヴィーに響く(ヴァース中など 0:57)。そしてどこか上品な音だ。(ミックス段階でかなりディストートさせているが)
行ったライヴの回数がまだ2回だった彼らが一発録りで挑んだ;前作のセルフタイトルEPを"名刺がわり"と呼んだ。
ただ今作を聴くと、すでに前作の時点でスタイルは確立されていたように思える。「"名刺"に偽りなし」だった。
前作のファンの期待にも応えられているし、
インディーロック ドリームポップファンは聴き逃せない2枚だ!
レコーディングについて
前作のセルフタイトルEP『The Waterfalls』は、全員が同じ部屋に揃って楽器を演奏した「一発録り」の作品だったが、今回は別録りに挑戦している。
ドラムとベースを最初に(ドラムと、ベースアンプは別部屋。プレイヤーは同じ部屋)
ギターは1本ずつ。プレイヤーは僕と同じコントロールルームにいて、アンプだけ別部屋。
ドラムは、それぞれの太鼓へのオンマイクの他に
部屋の隅、地面近くに置いたアンビ用マイク2つ
ドラマーの耳の高さほどで、ドラムキットの正面に置いたキット用マイク1つをセットしている。
オーヴァーヘッドマイクはC451EBのペア。
C414あたりで録りたかったが、以前一発録りをした「Youthlight」が今回のリリースに含まれる予定だったため、
当時のレコーディングで使用したC451Bに合わせることにした。
結局「Youthlight」は他の曲と同様EP用に録り直した訳なので、必要性はなかったのだが…。
クラッシュシンバルはマイネル(今回のレコーディングにタイミングを合わせ購入したらしい)。全曲で少し歪ませているが、とても良い音がしてる!
スタジオにあるパイステのハイハットとの相性も懸念したが、そこまで問題ではなくエンジニア・プレイヤーどちらも納得できたままレコーディングを進められた。
ミックスの最終段階では、メンバー全員で集まり、全曲立ち会いで音の最終調整を行いました。
録音:
高田馬場 BAZOOKA STUDIO Bst (ドラム・ベース・ギター・ヴォーカル)
スタジオペンタ大塚店 (ヴォーカル)
サウンドスタジオノア吉祥寺店 (「the long long goodbye」ギター)
(Hey) Bulldog Studio (僕の自宅。「Planet」ベース)
コウスケ自宅? (「Brighter」SE)
ミックス・マスタリング:
(Hey) Bulldog Studio