Rooibos『chairs』全曲レヴュー & レコーディングレポート


僕は北の風を感じる。ベルゲン・ノースロンドン・ボストン……。
2010年代インディー・ロックをほぼ(ギリ?)リアルタイムに消化できたデジタナルネイティヴ世代の音。
源流であろう1980年代後半から1990年代までのオルタナティヴ・ロックの素養でもって噛み砕かれ、純度が高いポップアルバムになっているかと思っています。


Rooibosは、東京で活動する男女4人組のバンド。男女ツインヴォーカルです。
ライヴ活動は未だ行っておらず、まずは曲を作り今回の音源製作に臨んだとのことです。
今回のEP収録曲はドラマーのyamagataさんが曲を作っています。

Rooibos 『chairs』



1st EP / 2019.10.01. release
  1. the bus
  2. she said
  3. Nowhere
  4. papa
So Gotta Go My Own Way!!!


1. the bus

少し不穏とも言えるPixies的なプレイントロをかましてから、
爽やかなギターが入ってきて、明るいRooibosサウンドの幕開け!
バンドインで判明しますが、最初のベースはⅳ(とⅱ)音だったのですねー。

コンポジション・アレンジともにとてもシンプル。
 エイトビートを叩くドラム
 ルートを弾くベース
 コードを弾くギター
 繰り返しリフを弾くギター
 おまけにヴォーカルは女声・男声ともに終始完全ユニゾン。
誤解を恐れず言うと、こんなにシンプルなアレンジでも、ほぼ2分ジャストというサイズなので途中でダレずにスッキリと聴けます。

初音源の1曲目となるわけですが、
曲の良さと、4人の演奏のキャラクターを、遠回りすることなく、序文として置けている印象。

最後のギターソロに挟まるⅤm(1:44)が際立ちます。

歌詞

"I was taught a nice song by the DJ from the moning radio 
That singer is singing at my ear" (歌詞ママ)
音楽に寄った歌詞からEPが始まるのもとっても素敵じゃんね?!
ほいでもってThese singers are also singing at our earsともなるわけ!綺麗な構造!

サウンド

ドラムは軽〜くピッチを揺らしてます。(音が伸びてるシンバルを聴くと分かりやすい)
フランジング的な効果が欲しかったので、ムラがある不完全なテープ再生をシミュレートするプラグインを掛けています。


2. she said

バンド一体となって緩い疾走感を演出してる。
いかにも インディーロック! なギターのリフがこの曲も爽やかですね。

仕事をしながらメロディアスに合間を縫っていくベースが最高!

2コーラス目のコーラス部(2:32〜)はブレイクやリズムチェンジのアイディアが盛り込まれていますが、執拗に繰り返してくる様がコミカルで面白い。
どっち付かずのまま進行して「ノらせないつもりかよ!」とツッコみたくなる。でも提示してくるリズムが気持ち良いので正解に思えます。

歌詞

本EP全体へなのですが、歌い方へのアドヴァイスを求められました。歌入れの日に指南してますが、この曲が特に注文が多かったかもしれません。(言葉のリンキングや、発音の脱落などの譜割に対して口出し。歌詞自体の文法などはそのまま)

サウンド

なるべくきらびやかに。
レコーディング時にふくよかな低音まで入ったリッチなサウンドのギターを録れたのに、ミックスでここまで細くするのはちょっと躊躇いもあったけど、イメージを最優先にした!

ヴァース部に挟まる<ジャジャッ!ジャジャッ!>のキメ(0:30など)は、厚みをもっともたせるために、ギターへテープエコー的なのをかけてます。

間奏では安っぽいファズがかかったようなギターソロ。
そのソロ直前に突如ノイズが入ってきますが、曲中にエフェクターペダルを踏んだかのような雰囲気をシミュレートしているわけです。
ただそのままノイズが急に入ってきても寂しいし、ノイズの意図も謎のままに終わる気がしたので、
メンバーとの立ち会いミックス時にエフェクターのスイッチを踏む音を、僕の家で録りました(僕が持ってる数少ないエフェクターの中で、唯一「カチッ」ってタイプのやつ)
あるのとないのとでは大違いなんですよ!

声はパラレルで歪みなどのエフェクトを掛けた声を重ねてます。(ソースは同じなのでダブルトラック録音じゃないよ)

1:03あたりでスティック?リム?の音が聴こえるのが堪んない!こういうの好物。




3. Nowhere

こんなコード進行ありかよ!!!
ドラマーが作ったとは思えない捻くれた進行です。(超ツボ。。。)

ギターのⅠコードに対するベースノートがⅰ→♭ⅵ→ⅵ→ⅱ→ⅳ→ⅱ→。
度数だけを見ると後半は特に目立ったことしてないように見えますが、Ⅰのコードトーンとぶつける2音目の♭ⅵのインパクトが強すぎるので、
その後の進行が救いのメジャースケールに帰ってきた感を演出してくれているように思えて気持ちいいのです。
プレイントロや 2コーラス目のヴァース部(1:40〜)で聴けるクロマチカルなリードギターのフレーズもセンス抜群です。理解してぶつけにきてる!

ハーフスポークンの男声ヴォーカルが気怠さをもたらしています。Pavement感〜

コーラス部は男女ユニゾンの"Uh"のみ。カッコいい。

ラストの展開部(2:30〜)ではこの"Uh"が対旋律的に使われ、3声になっています。歌っているのはベースのミオさんの声。使うかどうか決まっていなかったそうですが、僕は絶対入れた方がいいと思ったので、ゴリ推ししておきました!


ノリの駆け引き(特にバンドイン)が大事な曲なので、クリックを使わずに演奏をしています。

歌詞

「生き字引」って"a walking dictionary"って言うんだ…知らなかった。素敵な表現

サウンド

曲調も曲調なので、気兼ねなく攻めてみた(ラフミックスから個人的な解釈や趣味を遠慮なく詰め込んだ)
他の曲とはミックスの思想がまるで違います。

オープニング(プレイントロ?)にあたる部分はほぼモノラル。
「ローファイに」というリクエストだったので、古すぎるマイクを通したような音に加工し、テープっぽいノイズを加えています。

メンバーからの意向もあり、男声ヴォーカルには歪みエフェクトをたっぷりと。女声ヴォーカルはナチュラル目にしています。
コーラス部(1:00〜など)の声のプロダクションは、ヴァース部とはまた違っています。こっちはADTのモデリングプラグインで歪みまで処理したはずです。

2コーラス目のヴァース部でスネアの打ち損じがありますが、ラフな演奏というテーマなので、そのテイクのプレイのまま残しています。

ドラムは左半分で鳴るようにしています。(なのにドラムのガタさんの声はなぜか右から!笑)
ドラムのオンマイク達はモノラルにまとめて、ステレオのオフマイク(アンビ)で少し左右に広げた処理をしたはずです。

ギターソロ終わりにライドシンバルのカップ音が嘘臭く鳴りますが(2:11)
オーヴァーダビングではなく、他のトラックの余韻をバッサリ切って(+カップの音量を上げて)実現させています。


4. papa

各パートがほぼ同じことを続けて、それが重なっていくというミニマムな演奏です。
つまり無駄がないアレンジ!

コーラス部前のドラムの転がし方が気持ちいい〜(0:57〜)。16のノリが本当に心地良いです。叩いている姿もぜひ観て欲しい。動きも気持ちいいんだぁ

歌詞

こちらも「the bus」同様、「音楽を聴くこと」に対しての歌詞が出てきます。

1コーラス目のヴァース部は、歌詞が4行分なのに対して、
2コーラス目は、2行分で歌われています。
しかも1コーラス目の3・4行目に当たる部分で、「1・2行目を黙読的な扱いにしたのか?」「3・4行目が言いたいことだったのか?」と考えさせられます。

サウンド

ラストのコーラス部(2:37〜)だけダブルトラッキングにして、みんなで歌うパストラル的な雰囲気が増せればという意図がある。
("However papa is country home")

ドラムは機械的になってもいいとのことだったので、ゲートを強めに使って余韻を切り、スッキリと点のイメージで鳴らせています。

エンディング付近、リードギターのミスタッチは修正不要とのことだったので敢えて残しています。


レコーディングについて

The Waterfallsの『Youthlight』『In the Blue Lagoon』と同じく、BAZOOKA STUDIOのBstでレコーディングしました。
ドラムとベースは同じ部屋で同時に演奏しています。

深夜レコーディングが終わってそのまま、昼まで飲んだという、最高のゴールデンウィークの始まり方だったなぁ〜


録音:
高田馬場 BAZOOKA STUDIO Bst (ドラム・ベース・ギター・タンバリン・ヴォーカル)
 サウンドスタジオノア吉祥寺店 (ヴォーカル)
 (Hey) Bulldog Studio (僕の自宅。エフェクトペダルのスイッチノイズ)

ミックス・マスタリング:
 (Hey) Bulldog Studio